ことばとマーケティング 「癒し」ブームの消費社会史

松井 剛(著)

癒されたい
いつから私たちは、こんな言い方をするようになったのか。
「癒し」ブームの全体像を明らかにすることで、ことばとマーケティングの影響関係について考える。

発売日:2013年3月25日
ISBN:978-4-502-47240-4
定価:3,740円
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電子書籍版あり

「2014年 日本商業学会奨励賞 受賞」日本商業学会
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目次

第I部 背景:「癒し」ブームとは何か

第1章 問題の所在
  • 1.1 基本的な問い
    • 1.1.1 「広辞苑」に採録されたことは「癒し系」
    • 1.1.2 「癒し」の世俗化
    • 1.1.3 ニーズ起点の説明で捉えきれない「癒し」ブーム
  • 1.2 本書の着地点
  • 1.3 「ゼロ時代」の空気としての「癒し」
  • 1.4 本書の構成
第2章 「癒し」を求める世相の形成:自己表現から自己憐憫への消費者観の転換
  • 2.1「消費者は王様」:戦後日本におけるマーケティングの導入
    • 2.1.1 マーケティング・コンセプト
    • 2.1.2 日本生産性本部の設立とマネジリアル・マーケティングの組織的導入
    • 2.1.3 マーケティング・ブーム
  • 2.2 バブル崩壊まで:進歩史観に基づく主体的な消費者像
    • 2.2.1 進歩史観的消費論の連続性
    • 2.2.2 消費論ブーム前史:「生活者」の誕生
    • 2.2.3 「少衆論」と「分衆論」
    • 2.2.4 大衆社会論への拡大
    • 2.2.5 ボードリヤールの1980年代的換骨奪胎
    • 2.2.6 進歩史観に基づく消費論とマーケティング・コンセプト
  • 2.3 バブル崩壊以降:「癒し」を求める受動的な消費者像
    • 2.3.1 「癒し」ニーズを生み出したとされる背景:マクロ指標の確認
    • 2.3.2 「格差社会」における希望の喪失
  • 2.4 まとめ:残された問い

第II部 理論:「癒し」ブームをどのように捉えるのか

第3章 理論枠組み:言説と行動と意味の3項関係
  • 3.1 流行やブームに関する既存研究:消費者間相互作用への注目
  • 3.2 新制度派の社会学:模倣的同型化と理屈づけ
    • 3.2.1 模倣的同型化
    • 3.2.2 正当性確立における理屈づけの役割
  • 3.3 文化社会学:意味形成プロセスへの着目
    • 3.3.1 文化の生産
    • 3.3.2 分類という認知枠組み
    • 3.3.3 分類をめぐるポリティクス
    • 3.3.4 現実の社会的構築
    • 3.3.5 分類をめぐる分析枠組み
  • 3.4 構造の二重性
    • 3.4.1 流行語にみることばとマーケティングの相互作用
    • 3.4.2 ことばが持つ役割
    • 3.4.3 構造の二重性としてのことばとマーケティングの相互作用
  • 3.5 まとめ:言説と行動と意味の3項関係
第4章 データと分析方法
  • 4.1 データ
    • 4.1.1 新聞記事
    • 4.1.2 「癒し」関連書籍の書誌情報
    • 4.1.3 雑誌記事タイトル
  • 4.2 分析技法:言説分析・事例分析・内容分析
    • 4.2.1 言説(第III部):メディアに現れたブーム解釈の言説分析
    • 4.2.2 行動(第IV部):各産業におけるマーケティング行動の事例分析
    • 4.2.3 意味(第V部):雑誌記事タイトルの内容分析
  • 4.3 まとめ

第III部 言説:「癒し」ブームはどのように語られてきたのか

第5章 「癒し」ブームの発展略史
  • 5.1 「癒し」ブームのライフサイクル:分析期間と4つの時期
  • 5.2 第I期(黎明期):「ヒーリング」をめぐる零細ビジネス(1988〜1994年)
  • 5.3 第II期(導入期):大企業の参入(1995〜1998年)
  • 5.4 第III期(成長期):ブームの急発展(1999〜2002年)
    • 5.4.1 1999年
    • 5.4.2 2000年
    • 5.4.3 2001年
    • 5.4.4 2002年
  • 5.5 第IV期(成熟期):ブームの定着(2003〜2007年)
    • 5.5.1 女性向けのスパサービス
    • 5.5.2 百貨店など集客施設
    • 5.5.3 その他
  • 5.6 まとめ
第6章 「時代のキーワード」としての「癒し」
  • 6.1 「トレンド」としての「癒し」
  • 6.2 1999年:「新語・流行語大賞」と「ヒット商品番付」
  • 6.3 説明図式としての「癒し」:コント番組からパチンコまで
  • 6.4 「癒し」ブームへの揶揄と嫌悪感
  • 6.5 ブームの終焉についての予測:新たなキーワード「励まし系」の発見
  • 6.6 まとめ:賛否両論がもたらすフレーミング

第IV部 行動:「癒し」をめぐる模倣はどのようにして起こったのか

第7章 出版業界:医学と心理から音楽へ
  • 7.1 基本的な傾向
  • 7.2 日本十進分類法から見た「癒し」をめぐる書籍の多様化
  • 7.3 「癒し」系音楽の楽譜出版
  • 7.4 まとめ
第8章 音楽業界:コンピレーションCDの流行
  • 8.1 独立レーベルによる輸入CD
  • 8.2 大手レコード会社によるクラシック音楽の販売強化
  • 8.3 1999年:坂本龍一「energy flow」の大ヒット
  • 8.4 「癒し」系コンピレーションCD市場の形成
    • 8.4.1 『〜the most relaxing〜 feel』
    • 8.4.2 『image』
  • 8.5 当事者が意図しなかった「癒し系」という分類
  • 8.6 まとめ
第9章 観光業界:企業需要の低下からの活路としての「癒し」
  • 9.1 シティーホテルにおける「癒し」宿泊プランの流行
  • 9.2 地方ホテル・旅館への波及
    • 9.2.1 「癒し」を通じたリニューアル
    • 9.2.2 個人客開拓の手段としての「癒し」
  • 9.3 テーマパークのリポジショニング
    • 9.3.1 スパリゾートハワイアンズ
    • 9.3.2 ハウステンボス
  • 9.4 まとめ
第10章 玩具業界:大人のためのキャラクター市場の開拓
  • 10.1 「癒し系」キャラの誕生:たれぱんだ
  • 10.2 タカラトミー
    • 10.2.1 トミー:のほほん族・ひだまりの民
    • 10.2.2 タカラ:動物や植物をモチーフとする玩具の開発
    • 10.2.3 タカラトミー
  • 10.3 バンダイ:プリモプエル
  • 10.4 セガトイズ:夢ねこスマイル
  • 10.5 「癒し」要素の組み合わせによるキャラクター開発
    • 10.5.1 リラックマ(サンエックス)
    • 10.5.2 お茶犬(セガトイズ・ホリプロ)
    • 10.5.3 温泉くまちゃん(セガ)
  • 10.6 まとめ
第11章 観光とまちづくり:「癒し」を通じた観光資源の再解釈
  • 11.1 北海道地方:産官学連携による健康ツアー
  • 11.2 東北地方:森林セラピー
  • 11.3 関東地方:産業再生機構の支援による伝統的観光地のリニューアル
  • 11.4 中部地方:「癒しの県」としての山梨
  • 11.5 四国地方:遍路と「癒しの四国」キャンペーン
  • 11.6 まとめ

第V部 意味:「癒し」はどのようにして世俗化したのか

第12章 雑誌記事タイトルの内容分析:「癒し」の世俗化
  • 12.1 データの詳細
  • 12.2 「癒し」関連記事の急増と多様化
  • 12.3 7つの発見事実
    • 12.3.1 「癒し」の「やまとことば」化
    • 12.3.2 転成名詞「癒し」の普及
    • 12.3.3 「癒されたい」という受け身表現の普及
    • 12.3.4 「癒し系」の台頭と衰退
    • 12.3.5 コロケーションに見る女が男を癒すという図式
    • 12.3.6 「癒し」に見られる意味の多様性
    • 12.3.7 「癒し」の世俗化
  • 12.4 まとめ:共有された認知の3つの変化
第13章 社会タイプとしての「癒し系」
  • 13.1 社会タイプとは
  • 13.2 データの詳細
  • 13.3 3つの発見事実
    • 13.3.1 「癒し系」としての女性
    • 13.3.2 「癒し系」のライフサイクルと世代交代
    • 13.3.3 ジェンダーによる「癒し系」の違い
  • 13.4 まとめ:社会タイプとしての著名人

第VI部 解釈:なぜ「癒し」ブームが起こったのか

第14章 道具箱としての「癒し」
  • 14.1 分析の要約:言説・行動・意味
    • 14.1.1 第III部:言説:何が語られてきたのか
    • 14.1.2 第IV部:行動:どのようにして模倣が起こったのか
    • 14.1.3 第V部:意味:「癒し」はどのようにして世俗化したのか
    • 14.1.4 主要な発見事実
  • 14.2 構造の二重性における「理屈づけ」の役割
  • 14.3 「道具箱」としての「癒し」
  • 14.4 まとめ:言葉のお守り的使用法?
第15章 社会理論における消費社会観
  • 15.1 消費社会観の4類型
  • 15.2 文化の画一化
    • 15.2.1 文化産業
    • 15.2.2 「本当の欲求」と「誤った欲求」
    • 15.2.3 マーケティング的性格
    • 15.2.4 評価
  • 15.3 消費者欲求の操作
    • 15.3.1 モチベーション・リサーチと計画的陳腐化
    • 15.3.2 依存効果
    • 15.3.3 評価
  • 15.4 社会システムが持つ構造的圧力
    • 15.4.1 構造的に押しつけられた欲求
    • 15.4.2 マクドナルド化という鉄の檻
    • 15.4.3 記号体系による支配
    • 15.4.4 評価
  • 15.5 競合的消費
    • 15.5.1 見せびらかしの消費
    • 15.5.2 準拠集団がもたらす見栄の張り合い
    • 15.5.3 評価
  • 15.6 まとめ
第16章 結論:創造的適応としてのブーム
  • 16.1 競争的使用価値と創造的適応
    • 16.1.1 商業経済論とマクロ・マーケティング
    • 16.1.2 競争的使用価値
    • 16.1.3 創造的適応
    • 16.1.4 相違点と共通点
  • 16.2 結論:3つの創造的適応
  • 16.3 議論
    • 16.3.1 本書の貢献
    • 16.3.2 本書の限界と今後の課題
付録A マズローの欲求階層理論とマーケティング・コンセプト
  • A.1 はじめに
  • A.2 マズローの欲求階層理論
    • A.2.1 ヒューマニスティック心理学
    • A.2.2 欲求の階層
  • A.3 マズローの欲求階層理論への批判
    • A.3.1 実証に関する批判
    • A.3.2 理論枠組みに関する批判
  • A.4 マーケティング論における欲求階層理論の受容
  • A.5 欲求階層理論とマーケティング・コンセプトの親和性
  • A.6 おわりに
付録B 新聞記事・雑誌記事タイトルの検索方法
付録C 雑誌記事タイトルのデータについての詳細
  • C.1 検索およびデータ処理手順
  • C.2 雑誌ジャンル
付録D 「癒し」ブーム年表

索引

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