経営学分野の大学院生(博士後期課程)による優れた研究論文を表彰する「第3回 碩学舎賞」の、授賞論文を決定いたしました。
審査委員会は、2014年12月21日(日)にヒルトンホテル大阪(大阪市北区)にて行いました。6名の審査委員の先生にお集まりいただき、応募された8編の論文について審査をいただきました。その結果、今回は一席の論文2編が選出される審査結果となりました。(二席は残念ながら該当無しという結果です。)
そして、受賞者お二人をお迎えしての表彰式を、2015年2月8日(日)にステーションコンファレンス東京(東京都千代田区)にて開催いたしました。当日は、一席を受賞されたお二方と審査委員の先生方にもご臨席いただき、表彰状・副賞の授与式と懇談パーティーを催しました。
なお、表彰論文の副賞として、賞金および碩学舎オンラインジャーナル『SBJ』での表彰論文リリース、碩学舎からの著書出版の権利が与えられます。今回の受賞者お二方の応募論文は、今春に『SBJ』として発行する予定です。
審査結果
一席(2編) :
「消費者との共創コミュニティにおける製品開発に関する研究-Quirky社事例研究-」
(神戸大学大学院 経営学研究科 青木 慶 氏)
「顧客資源を顕在化させるマネジメントの可能性―がん治療に伴う家族支援を事例に―」
(神戸大学大学院 経営学研究科 藤井 誠 氏)
二席 :該当なし
講評 (審査委員長 嶋口充輝先生)
3年目を迎えた今回の「碩学舎賞」では、過去2回にも増してレベルの高い論文が多かったという印象が残った。そのため、とても僅差での授賞者の選出となり、上位2編の論文に関しては甲乙つけがたく共に一席として評価する結果となった。残念ながら選に漏れた応募論文にも、一席の論文に負けない充実した内容のものが幾編もあったということも記しておきたい。
一席となった論文2編についての講評を行なう。まず、「消費者との共創コミュニティにおける製品開発に関する研究 -Quirky社事例研究-」は、製品開発分野のユーザー・イノベーション研究に関する多くの既存研究のレビュー、および著者独自で実施した先進事例に関するインタビュー調査と、いずれも完成度が高い仕上がりの研究であるという点で審査委員の意見が一致した。とくに、既存研究では分析対象にされていなかったという「金銭的インセンティブ」の重要性について慎重に検討を重ねている点を評価したい。その一方で、そこから導出された結論が、その妥当性は認めつつも意外性のない、あえて言うならば「当たり前」にも感じさせるものであったという点で、今後のさらなる研究発展に期待する意見も審査委員から発せられた。
次に、同じく一席となった「顧客資源を顕在化させるマネジメントの可能性 ―がん治療に伴う家族支援を事例に―」については、その研究テーマと分析手法に関しての「挑戦的」な姿勢を高く評価する審査委員の意見が多かった。具体的には、サービス・ドミナント・ロジック研究の流れをふまえたうえで従来あまり言及されなかったという「資源統合」という概念を用いた点での理論面での貢献、およびリサーチ・サイトとして希少性の高い対象をとりあげ丁寧な記述を行なった定性的研究としての価値、といったことが評価された。ただし、その理論フレームと興味深い分析対象との整合性について難がある、という評価もあった。ありていに言えば、この分析対象であればサービスのマネジメントという問題が本質的な関心になるのだろうか、という批評である。もっとも、そうした難があるとしても、「碩学舎賞」設立の背景に経営学分野の若い研究者の卵を支援するという考えがあることから、当論文のような既存の枠組みを打破するような論文についても高い評価を与えるべきである、ということで一席の論文に選出することとなった。
残念ながら選に漏れた応募論文の著者も含め、今回の碩学舎賞に応募された大学院生の諸君には、ますますの研鑽を積んでいただき、来年度の碩学舎賞にもぜひ積極的に応募いただくことを期待している。
碩学舎賞 審査委員
石原 武政(流通科学大学特別教授、大阪市立大学名誉教授)
谷 武幸 (神戸大学名誉教授)
嶋口 充輝(慶應義塾大学名誉教授)
石井 淳蔵(流通科学大学学長、神戸大学名誉教授)
加護野 忠男(甲南大学特別客員教授、神戸大学名誉教授)
古川 一郎(一橋大学教授)
※ 本件のお問い合わせは、株式会社碩学舎「碩学舎賞」担当・清水までお願いいたします。
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