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「第4回 碩学舎賞」 審査結果と講評

経営学分野の若手研究者による優れた研究論文を表彰する「第4回 碩学舎賞」の授賞論文をお知らせいたします。

審査委員会は、2015年12月20日(日)にヒルトンホテル大阪(大阪市北区)にて行いました。6名の審査委員の先生にお集まりいただき、応募された10編の論文について審査をいただきました。その結果、今回は一席の論文1編、二席の論文2編が選出される審査結果となりました。また、表彰式は2016年2月28日(日)に大阪第一ホテル(大阪市北区)にて催しました。

表彰論文の著者の皆様には副賞として、賞金および碩学舎オンラインジャーナル『SBJ』での表彰論文リリース、碩学舎からの著書出版の権利が与えられます。今回の受賞者の方々の応募論文は、2016年5月より順次、『SBJ』として発行する予定です。

なお、「碩学舎賞」は第5回より隔年開催とさせていただくことになりましたこと、あわせてお知らせいたします。

審査委員会の様子

表彰式の様子


審査結果

一席(1編) :
「オープン・イノベーションにおける研究開発組織の分化:企業内組織間コンフリクトにかかわる探索的事例研究」
(同志社大学 商学部 助教 中園 宏幸 氏)

二席(2編) :
「同族による経営の維持と終焉の論理 ―医薬品産業における戦略変化の検討を通して―」
(滋賀大学大学院 経済学研究科 博士後期課程 藤野 義和 氏)
「観光客ベース・デスティネーション・ブランド・エクイティー・モデルの検証:リピート観光客の感情的信頼と経済的価値による違い」
(神戸大学大学院 経営学研究科 博士後期課程 李 相典 氏)

講評 (審査委員長 嶋口充輝先生)

4年目を迎えた今回の「碩学舎賞」の応募論文について、印象を一言で表せば「粒ぞろい」だった。大学院生をはじめとする若手研究者による論文として、既存研究レビューやデータ収集に関して熱心な作業をしているものが多かったからである。その一方で、そうした研究の手続き面での手堅さがある反面、そこからもたらされる結論やインプリケーションについては物足りなさが目立つということも言える。いずれの応募者についても、今後の研究のさらなる展開が期待されるところである。

一席に選考された「オープン・イノベーションにおける研究開発組織の分化 : 企業内組織間コンフリクトにかかわる探索的事例研究」は、研究面でも実務面でも近年注目を集めているオープン・イノベーションに関して、その失敗事例において企業組織内でコンフリクトがどのような要因でもたらされたのかという問題を扱っている。技術探索組織と技術活用組織との組織統合が行なわれないことなど、抽出された問題点は興味深いものであるが、難を言えば既存研究を超える理論的貢献がわかりにくいという点が指摘される。しかしながら、丁寧な文献レビューを行なっていることに加え、機密性が高いと考えられる企業組織内部での外部技術探索・評価の実態を関係者へのインタビューを通じて収集できているという点が、高い評価につながった。 二席については、甲乙つけがたく2編の論文が選ばれた。まず、「同族による経営の維持と終焉の論理 ―医薬品産業における戦略変化の検討を通して―」は、医薬品産業における同族企業の動向を戦略グループの概念で分析を加えたものである。収集したデータをもとに通説への反証と新たな理論構築を目指すという論文構成がしっかりしている点が高く評価された反面、同族経営かどうかという次元と戦略グループの概念との関係にわかりにくさがあるなど、分析面でのロジックに課題が多いことが指摘された。

もう1編の二席論文である「観光客ベース・デスティネーション・ブランド・エクイティー・モデルの検証 : リピート観光客の感情的信頼と経済的価値による違い」については、手堅い文献レビューと実証分析を行なっている点が高く評価された。研究面だけでなく、社会的に期待が高まっているものを扱っているテーマを設定しているということも選考委員の関心を集めた。ただし、「感情的信頼」や「経済的価値」が高いグループにおける再訪問意図が高くなる、という分析結果はあえて言えば常識的感覚からも導けるようなものであり、構成がしっかりしている分だけ物足りなさを感じさせる結果となっていることが惜しく感じられた。

残念ながら選に漏れた応募論文の著者も含め、今回の碩学舎賞に応募された大学院生の諸君には、ますますの研鑽を積んでいただき、次回の碩学舎賞にもぜひ積極的に応募いただくことを期待している。

碩学舎賞 審査委員

石原 武政(流通科学大学特別教授、大阪市立大学名誉教授)
谷  武幸 (神戸大学名誉教授)
嶋口 充輝(慶應義塾大学名誉教授)
石井 淳蔵(中内学園流通科学研究所所長)
加護野 忠男(甲南大学特別客員教授、神戸大学名誉教授)
古川 一郎(一橋大学教授)


※ 本件のお問い合わせは、株式会社碩学舎「碩学舎賞」担当・清水までお願いいたします。
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